大人のいない世界

「じゃあ、もうひとついい?」

「なんだ?」

「この前、図書館で会ったとき、おにいちゃん言っていたよね。

『ナナを“あの世界”に連れて行くまでには、まだ時間がいる』って」

「えっ、なにそれ。

私、そんな話聞いてないんだけど」


ナナが顔を歪ませる。

私は、広汰おにいちゃんに話し続ける。


「福也君や蓮君よりも、大人の世界に連れて行くのに時間がかかるってことだよね?

どうして?

そんなに、ナナと同じ誕生日の十六歳が多かったの?

それとも、違う理由があるの?」


すると、今まで私の質問に淡々と答えていた広汰おにいちゃんは、少し黙った。

そしてそのあと、


「それは、もう取り消しだ」


と言った。


「えっ?」


取り消し?それってどういう………?