大人のいない世界

「そっか、ありがとな」


そう言って、福也君は図書館に向かった。


「さっきの、福也おにいちゃん?」

「福也おにいちゃんだよね?」


砂まみれになって戻ってきた翔と舞衣が、私に言う。


「うん、福也君だよ。
なんか、広汰おにいちゃんのことさがしていたみたい。

何の用かは、教えてくれなかったけど」


「そっかぁ…………」



つまらなさそうに、翔が言う。

舞衣のほうも、あまりご機嫌とは言えないようす。

「?
二人とも、どうしたの?」


「ぼくなんか……あのおにいちゃんすきじゃないな」

「まいも、あのおにいちゃんにがて」


福也君が進んでいった方角を見て、二人はそう呟いたのだった。