大人のいない世界

「それにしても、杏奈って料理上手だよねー!

“あっちの世界”に行くまでに、私に料理教えてくれない?」


ナナが、サンドイッチを美味しそうに頬張りながら、私に言った。

ゴホッ、ゴホッ、と私は口に含んだお茶をむせ返らせる。


「ちょっと、ナナ…………!」

「え?何?

ダメなの?」

「そうじゃなくて…………!ゴホッ」


むせ返ったせいで、うまく言葉が出ない。


「ねえ……“あっちのせかい”ってなあに?」


それまでおかずを分けるのに集中していた翔が、ナナにたずねる。


「え?“あっちの世界”っていうのはもちろんあれよ。

大人の_____」

「ナナ!」


私は、大声でナナの名前を呼んだ。

ナナは、肩をびくっとさせる。


「それは内緒だって、おにいちゃんに言われたでしょ」


私がそう言うと、はっと思い出したかのような顔をするナナ。