別れたいのに愛おしい~冷徹御曹司の揺るぎない独占愛~

「ご馳走様でした」

会計を済ませてくれた奏人にお礼を言う。

「今度は夜来ような」

奏人は小さく笑って言う。

「無理だよ。会社の人に見られたら噂になっちゃう」

昼はともかく、夜に個人的に食事をしているのを見られたらどう思われるか。考えると恐ろしい。

だけど、奏人は私の心配とはうらはらに気にした様子もない。

「構わないだろ? うちの会社は社内恋愛禁止じゃないんだから」

禁止じゃないけど、噂はされる。

松島さんなんて発狂しちゃうんじゃないかな。明らかに奏人のこと好きそうだし。

「俺は堂々と知らせたいけどな。理沙は俺の恋人だって」

「!……恋人じゃないし!」

焦って言い返すと、奏人はくすっと笑った。

「今はな。でももう時間の問題だろ?」

「な、なに、その自信満々な態度」

「半分、願望?」

……すっかり奏人のペースに流されている気がする。

最近、何かと関わってばかりだからかな。

だけど、一緒にると心地よいから離れようと思えないんだよね。