別れたいのに愛おしい~冷徹御曹司の揺るぎない独占愛~

オフィスビルのエントランスを出て、駅の方向へ向かう。

途中、何人かに一緒に出かけるところを目撃されてしまった。

私は奏人のアシスタントだから、一緒に出かけてもおかしくは無いんだけど、以前みたいに松島さんにいろいろ聞かれたら面倒だなと憂鬱になる。

だけど奏人はそういったことを全く気にしていないみたいで、やけに機嫌良く私に声をかけて来る。

「何が食べたい?」

「特に考えて無かったんだけど、奏人は?」

昼に外食に行く習慣が無い私には、行きたいお店が思い浮かばない。

「そうだな……じゃあ、あそこは?」

奏人が示すのは可愛らしいイタリアンの店。

パスタは大好きだから嬉しい。笑顔で了承し、奏人と一緒にお店に向かう。


店内に入ると、直ぐに席に案内して貰えた。

お昼時だから混んでいると思っていたのに、意外だ。

席に着いて気付いたんだけど、外から見た印象よりも全体的に高級感が有る。

隣の席との間に充分なスペースが取られているし、テーブルや照明などの質も良さそうだ。

何より、メニューに記載されている金額に驚いた。

どれも軽く二千円以上する。一番手頃そうなランチセットですら千九百円。

ここって結構な高級店なんだ。

毎日のお昼に来る手軽さが無いからそれ程混んでないのかも。