別れたいのに愛おしい~冷徹御曹司の揺るぎない独占愛~



それから一週間が経過した。

奏人から依頼される仕事は、過去の販売実績データの抽出や、顧客に送る資料の作成が多い。

それに加え、外出が多い奏人の交通費などの経費清算処理、チケットの手配など細々したこともある。

以前から担当していた営業一課内の経費管理や日々の売上進捗データの更新、売掛金の検収なども有るから、結構忙しい。

郵便の仕事を松島さんにお願いしてなかったら、毎日遅くまで残業だったかも。

視界の端で「郵便物が無くなった!」って松島さんと気弱そうな営業マンが騒いでいるのが見えてしまい非常に気になりながら、急ぎの仕事にとりかかる。

集中してパソコンの画面を睨んでいると、奏人に声をかけられた。

「中瀬さん、午後外出できる?」

「出来ますけど、どこにですか?」

画面から顔を上げて答えると、奏人が封筒を差し出して来た。

「悪いんだけどアイケー産業にこの資料を届けて欲しいんだ。自分で行く予定だったんだけど、他社で急な打ち合わせが入って行けなくなった」

「分かりました」

アイケー産業なら距離も近い。
往復で一時間も掛からず帰ってこれる。

資料を渡すだけの単純なお使いみたいだし、問題なさそうだ。

時計を見ると、お昼の十一時五十分。

今日はお弁当を持って来れなかったから、どこかで外食してそのまま移動しようかな。

やりかけの仕事はあと十五分もあれば終りそうだし……よし、そうしよう。

頭の中でこれからの段取りをすると、仕事のスピードを上げて行く。