別れたいのに愛おしい~冷徹御曹司の揺るぎない独占愛~

……こんなこと考えないで、早く仕事をしよう。

奏人は午後から外出だし、本当に余計なことをしている時間はないのだ。

それなのに、奏人と目が合ったら、つい口にしてしまった。

「奏人って松島さんのことどう思う?」

「個性的な人だと思うけど、何でだ?」

「綺麗だなとか思う?」

奏人は怪訝そうな顔をしていたのだけれど、私の返事でニヤリと笑った。

「もしかしてヤキモチ?」

「え?……ま、まさか!」

よりを戻したわけでもないのに、嫉妬するなんておかしい。

ただ、なんとなく不快だっただけ。

松島さんのあからさまなアプローチに、ニヤニヤしている奏人がだらしなく見えて……でも不快になるのはやっぱり嫉妬なのかもしれない。

認めたくないけれど。

「なんとも思わない」

「え?」

顔を上げると、奏人がからかうように言う。

「理沙以外の女を見ても何も感じない。だから浮気の心配はしないでいいからな」

「べ、別に心配なんてしてないから」

そう言い返したけれど、奏人は見事にスルーして、仕事の話を始めてしまった。

おかげで、私もそれ以上は騒げず、気持ちを切り替え資料に目を向ける。

それからは、ロスしてしまった時間を取り戻す為、大急ぎで打ち合わせを進め、予定通り終了。

奏人から沢山の仕事を振られてしまった。