別れたいのに愛おしい~冷徹御曹司の揺るぎない独占愛~

再びふたりになると、一気に部屋が静かになった。

疲労感に苛まれながら奏人に視線を向ける。

「これ、飲むか?」

私がコーヒーを貰えなかった事に気付いていたのか、奏人がおずおずとまだ口をつけていない様子のカップを差し出して来た。

「いらない。それは松島さんが奏人の為に入れて来たものだし。それより早く続きをしよう」

「……なんでいきなり機嫌が悪くなってるんだ?」

「悪くなってないけど、なんか疲れた、松島さんにエネルギーを吸い取られた感じ」

私の言葉に、奏人は納得したように頷く。

「強烈な人だよな」

「奏人は嬉しそうにしてたじゃない」

「は? そんな訳あるか。理沙が強引な言い方するなって言ったから気を遣って話してたんだよ。平和的に引継ぎできそうだろ?」

「それは、まあ……ありがと」

あの扱いの難しい松島さんの機嫌を損ねず、面倒な業務を振れたのは、奏人のおかげだ。

良い結果なんだけど、なんだかすっきりしない。

多分、目の前で奏人がアプローチされているのを見たからだけど。

イケメンで将来有望な今の奏人は、凄くモテル。

そう分かっているんだけど、実際目の当たりにしたらモヤモヤしてしまった。

付き合ってる時、私以外の女性と仲良くしている姿を見たことが無いから免疫も無く、今の状況が余計に気になってしまうのかもしれない。