別れたいのに愛おしい~冷徹御曹司の揺るぎない独占愛~

「もう! ちゃんと仕事の話してよ」

「してるだろ?」

「顔つきが仕事っぽくない」

「それは理沙の……」

奏人が何か言いかけた時、トントンと扉をノックする大きめな音が聞こえて来た。

誰だろう?

ドアの方に視線を向けるのと同時に、松島さんが入って来た。

カップがふたつ載ったトレーを持っている。

「お疲れさま。随分時間かかってるみたいね、一息入れたいだろうと思って、コーヒーを持って来たわ」

「え……」

同部署内の社員同士の打ち合わせでお茶?

通常なら、絶対にお茶なんで出さない状況だけど。

松島さんは唖然とする私に見向きもせずに、奏人のノートパソコンの少し横にカップを置く。

「北条君はミルクとお砂糖は必要かしら?」

「いえ……お気遣いありがとうございます」

奏人もびっくりしているようだ。
ずいと寄ってくる松島さんに対して、若干身体が引き気味。

それでもすぐさま気を取りなおしたようで、見事な営業スマイルを浮かべて松島さんに言った。

「丁度良かった。実は松島さんにお願いがあるんです」

「えっ? なあに?」