別れたいのに愛おしい~冷徹御曹司の揺るぎない独占愛~

郵便関係については結論を出したので、次の確認事項に移っていく。

奏人と仕事をするのは初めてだけど、決断が早くて要領がいいと感じた。

余計なことに時間はかけない。

この調子で頑張れば、社長にだってなれるんじゃないかな、なんて思ってしまう。

「理沙は山梨工場に行ったことがあるのか?」

「新入社員研修のときに一度だけ」

そう答えると、奏人はがっかりしたように肩を落とした。

「どうしたの?」

「一度も行ったことが無いなら、今度の出張の時、見学って名目で一緒に連れて行こうと思ったんだけど、研修で行ってるなら部長の許可が下りないだろうな。仕事後は理沙と一緒に温泉でも入れたらと思ったんだけど」

残念。と言いながら奏人はノートパソコンの画面に視線を落とす。

突然プライベートの甘い空気に当てられた私は、動揺しながらクレームを入れる。

「それこそ公私混同じゃない!」

しかも、一緒に温泉って……私達よりを戻した訳じゃないのに。

付き合ってるときだって、一緒に温泉もお風呂も入ったことないのに。

ブツブツ言いながら、私も自分の真新しいノートパソコンの画面に視線を落とす。

これは奏人のアシスタントとして会議に参加することも増えるからと、今朝支給されたものだ。


まだ使い慣れてないけど、あると便利だなと思う。

奏人が共有フォルダに入れた予定表を開いてみる。

来週水曜日に、山梨工場出張とある。

日帰りで工場視察と今後の生産状況の打ち合わせ、その後接待を受けると書いてあった。

こんな詰まった予定じゃ温泉なんて行ける訳がない。

からかわれたんだと悟り軽く睨むと、奏人はなぜか嬉しそうに目元を緩める。