別れたいのに愛おしい~冷徹御曹司の揺るぎない独占愛~

お代わりのカクテルが運ばれて来ると、奏人が真面目な顔をして先ほどの話の続きを始めた。

「理沙の言う通り、俺がさくら堂に来たのは小林製作所の存続がかかっていたのが一番大きな理由だよ」

奏人の警告に恐れをなした私は、カクテルをゆっくり飲みながら聞き返す。

「滝島課長が小林製作所との取引を切ろうとしていたって聞いたけど」

「そう。あの人は仕事に情は持ち込まないから、昔のよしみでとかそんな事は一切ないんだ。現時点での数字が重要。端から見たらまだ再生の余地がある仕入先でも待つ事が無い。問題は有りながらも、今の所それで二課は業績を上げている。小林製作所も俺が決断しなかったら今頃取引を切られて倒産していたかもしれない」

「そんなに深刻だったんだ」

奏人は頷くと、「でも」と少し明るい表情をした。

「今、建て直しを頑張ってるんだ」

「そうなの? 良かった、奏人のおかげでチャンスが出来たんだね」

奏人は私の言葉に嬉しそうにしながら、家族のことを話してくれた。

奏人のお父さんは社長の弟で、お母さんと大恋愛の末結婚して小林家の養子になった。

今は二人揃って家業を守り立てる為に頑張っているそう。

あと兄弟姉妹が五人もいる大家族だそうで、一番上の弟さんが家業を継ぐ予定らしい。