別れたいのに愛おしい~冷徹御曹司の揺るぎない独占愛~

しばらくして落ち着くと、急に恥ずかしさが込み上げて来た。

感情的になって怒って泣いて、更には隠していた本心まで暴露してしまうなんて。

何と言う情緒不安定さだろう。

奏人の顔を見るのが恐い。

そう思っていたけれど、静かになった私に気付いた奏人は背中に回した腕を解いてしまって、必然的に向き合う形になってしまった。

目が合うと、奏人は優しく微笑みながら手を伸ばし、私の頬についた涙を拭ってくれた。


「落ち着いた?」

「……うん」

「じゃあ、話の続きをする? それとも今日は帰るか?」

奏人の声が一段と優しくなった気がする。

それになんだかとても機嫌が良さそうだ。

私と違って気恥ずかしいそうな気配は全くない。

「話の続きを聞きたい」

「分かった」

奏人はそう言うと、立ち上がり、先ほどまで座っていた私の正面の席に戻る。

座りなおすと私を見つめて来た。
かなり甘い雰囲気を醸し出して。

私達の関係はまた変化したのかもしれない。

ふたりの間にあった溝が大分埋まり距離が縮んだと言うか……かと言って恋人同士に戻れるわけじゃないけれど。