別れたいのに愛おしい~冷徹御曹司の揺るぎない独占愛~

喧嘩で意地になっていた私も、そういった優しさを見せられると段々素直になっていき、自分が悪かったところに気付き、仲直りをしていた。

今だって……私は苦しい気持ちになりながら少し頭を下げた。

「……ごめん。意地悪なこと言って」

奏人が気を悪くするのも無理はない。

私が事情を聞きたいと言ったから奏人は多分仕事を途中で切り上げてここまで来てくれて、曖昧な関係の私の請うままに、家庭の事情を話してくれている。

私の気持ちに、寄り添った行動をしてくれていたのだ。

それなのに私は、突然スイッチが入って機嫌を損ね、攻撃的な嫌味を口にして、しつこく難癖をつけた。

誰が見たって、今のは私が悪いと言うだろう。

「奏人と同僚として上手くやっていきたいと思ってるのに、ちょっとしたことでどうしようもなくイライラしたり辛くなって、感情的に責めてしまうの。喧嘩したいわけじゃないのに止まらなくなる……」

自己嫌悪に陥って項垂れていると、奏人が身動きした気配を感じた。

それでも顔を上げる気力が沸かないでいるうちに、奏人は私の直ぐ側に来て隣に座り、私の身体を包むように抱きしめて来た。