別れたいのに愛おしい~冷徹御曹司の揺るぎない独占愛~

「私のこと、鈍感だと思ってたんだよね? 実際一年も騙せたわけだし」

嫌味な言葉を返してしまうと、奏人は顔を曇らせた。

「そんな意味で言ったんじゃない、分かるだろ?」

「じゃあ、どういう意味? なんで私が鋭いと意外だと思ったの?」

「昼の時点で小林製作所のことを知らなかった理沙が、今はかなり事情を察しているから驚いただけだ。こんなことでいちいち絡むなよ」

「こんなことって……先に奏人が嫌なことを言ったからでしょ?」

「……もう、いい」

奏人は言葉を飲み込むように溜息を吐き、私から目を逸らした。

それからはひと言も話そうとしない。

完全に怒らせてしまったようだ。

気まずい沈黙が個室に流れる。

じっと座っているのも辛くなり、私はジョッキを手に取り、半ば自棄になりビールを一気に飲み乾した。

「理沙? そんな一気に飲むな! それ程強くないんだから」

奏人が慌てたように言う。

怒っていても、心配はしてくれるようだ。

こういう所は以前と変わらないなと思う。

付き合ってた頃もときどき喧嘩をした。
奏人は怒りながらも私を気遣ってくれていたな。