別れたいのに愛おしい~冷徹御曹司の揺るぎない独占愛~

奏人は私が頷いたのを確認すると、オフィスビルのエントランスへ向かって行く。

私は少し距離を置いてから、エントランスに向かう。

四基あるエレベーターのを内、一番左端のエレベーターに奏人が乗ったのが見えたけれど、追いかけず次のエレベーターを待った。

奏人とは別れてただの同僚になったはずなのに、早くも二人きりで会うことになるなんて……こんなことでいいのかと、迷いが生まれる。

用件はかなり個人的なことで、ただの同僚なら踏み込まないような内容だし。

でも、奏人のことをちゃんと知りたい気持ちが大きい。
多分、自分がどんな風に騙されていたのか、全て知りたいからだと思うんだけど……。


しばらくして、降りてきたエレベーターに乗ると、扉が閉まる直前に滝島課長が滑り込んできた。

慌てて、“開く”ボタンを押す。

「ありがとう」

滝島課長がそう言いながら視線を向けて来て、先に乗っていたのが私だと認識すると、ほんの少しだけ表情を固くした。

……もしかして、奏人だけでなく私も良く思われていない?