別れたいのに愛おしい~冷徹御曹司の揺るぎない独占愛~

「だから、理沙に直ぐに連絡出来なかったんだ。心配かけて本当にごめん」

だから、なんで私が心配していたと信じて疑わないんだろう。
そんな反抗心を抱きつつも、口からは拗ねた様な言葉が出てしまう。

「海外からだって電話位出来るでしょ? ただ面倒だったただけじゃないの?」

「違うって! 確かに海外からだって連絡出来るけど今回は社長と同行で、向こうでは四六時中付きまとわれていたから……いや、これは言い訳だよな。俺が全部悪い! ごめん理沙」

直角?って位に腰を曲げて勢い良く謝る奏人に、私は唖然としてしまった。

「あの……もう、いいんで」

とりあえず、一度同僚に戻ると言うことで決着は付いてる訳だし。それにしても……。

「奏人って、性格まで変わったよね」

しみじみと思う。

もっと穏やかで勢いで何か言う人じゃ無かったのに、今の奏人は強引に抱き締めて来るし、謝る時も声を大きくして、一方的だし。

「どんな風に?」

自覚していないのか、奏人は怪訝な顔をする。

「自己主張が強くなった感じ。強引でちょっと俺様って雰囲気」

私の言葉に、奏人はショックを受けた様に目を瞠った。

「……それは、前は理沙に嘘を言ってる後ろめたさから遠慮している面があったからだと思う。今は何の後ろめたさも無いから……でも俺は俺様なんかじゃない、と思う」

奏人は後半、あからさまにがっかりとした様子でブツブツと呟いた。

そんなにショックを受けなくてもいいのに。
それほど俺様が嫌だったのかな?

まあ、どちらにしても今の奏人が本当の奏人って事なんだ。

未だに戸惑いが有るけど、その内慣れるものなのかな?

立場も外見も性格も変わってしまった元恋人が、明日からは一緒に働く同僚だなんて……この先どうなるのか想像すらつかなかった。