部長は気を悪くした様子も無く、温厚な笑顔で続けた。
「急な話で驚かせてしまったね。でも中瀬さんなら適任だと思っているよ。後の細かい業務の分担については、北条君と打ち合わせをお願いします」
部長はそう言うと、サッサと席を立とうとする。
え? ちょっと待って。まさか私と奏人を二人きりにするつもり?
「部長、ちょっと待って下さい!」
冗談じゃないと追い縋ろうとした私をあっさりとスルーして、部長は部屋を出て行った。
ああ、「お願い」なんて言っていたけどこれは業務命令で決定した事なんだ。
恵比寿さまの様な外見のいつもにこやかな部長だけど、こうと決めると結構強引に事を進める時がある。
笑顔の下に確固たる意志が有って、何を訴えても通じない非情な一面を何度か見た事がある。
だからこそ出世競争に勝ち抜いて、部長にまで昇進出来たんだろうけど。
でも、私の担当業務なんかで、そんな強い一面を発揮して欲しく無かった。
未練がましく部長が出て行った扉を見つめる私に、声がかかった。
「理沙」
低く響くその声に、胸が締め付けられる。
まるで知らない人と居るような緊張を感じながら、私はゆっくりと振り返った。
「急な話で驚かせてしまったね。でも中瀬さんなら適任だと思っているよ。後の細かい業務の分担については、北条君と打ち合わせをお願いします」
部長はそう言うと、サッサと席を立とうとする。
え? ちょっと待って。まさか私と奏人を二人きりにするつもり?
「部長、ちょっと待って下さい!」
冗談じゃないと追い縋ろうとした私をあっさりとスルーして、部長は部屋を出て行った。
ああ、「お願い」なんて言っていたけどこれは業務命令で決定した事なんだ。
恵比寿さまの様な外見のいつもにこやかな部長だけど、こうと決めると結構強引に事を進める時がある。
笑顔の下に確固たる意志が有って、何を訴えても通じない非情な一面を何度か見た事がある。
だからこそ出世競争に勝ち抜いて、部長にまで昇進出来たんだろうけど。
でも、私の担当業務なんかで、そんな強い一面を発揮して欲しく無かった。
未練がましく部長が出て行った扉を見つめる私に、声がかかった。
「理沙」
低く響くその声に、胸が締め付けられる。
まるで知らない人と居るような緊張を感じながら、私はゆっくりと振り返った。

