別れたいのに愛おしい~冷徹御曹司の揺るぎない独占愛~

国内営業部のフロアに一番近いこの会議室は、長いテーブルに、背もたれの付いた椅子が八脚並べてある、少人数会議用の部屋だ。

綺麗に磨かれた大きな窓の外には、夕日が見えた。

十一階のフロアからの眺めはそれなりに良いし、黒を基調とした凝ったインテリアになっている良い部屋の為、お客様との打ち合わせに使う事もある。

部長は一番奥の上座ではなく、テーブルの中央に座り、奏人はその隣に、私はテーブルを挟んで部長の正面に座った。

奏人と目が合ってしまったら、普通ではいられない気がするので、視線は感じているものの、決して見ない様にして部長の言葉を待つ。

部長は相変わらずの人の良い笑顔で、私に話しかけてきた。

「帰り支度をしていたところを呼び止めて悪かったね。どうしても今日中に伝えておきたかったから」

「用が有る訳では無いので大丈夫です。あの、お話とはなんでしょうか?」

なんで奏人まで同席してるんですか? と言いたい気持ちはグッと堪える。

「中瀬さんの担当業務が一部変更になりました」

「変更、ですか?」

人事異動の時期でもないのに、なんで突然?

怪訝な顔をしたであろう私に、部長は満面の笑顔で頷いた。

「中瀬さんには、明日からこちらの北条君の業務のフォローを担当して貰います。その分今やって貰っている庶務的な仕事は新入社員に回して調整して下さい」

「ええっ⁈」

部長の前だと言うのに、つい大きな声を出してしまう。

だって、奏人のフォローって有り得ないでしょう⁈