別れたいのに愛おしい~冷徹御曹司の揺るぎない独占愛~

営業一課の仕事は順調だった。

奏人が手がけている新商品の前評判は上々だし、既存製品の売上げも良好だった。

課内の雰囲気も、今までの中で一番良いかも。

今までは我関せずといった態度であまり仕事をしなかった松島さんが、なぜか突然やる気を見せ始めたのだ。

彼女は意外と優秀で、聞くと過去にはアシスタントではなく営業として外周りをしていたそうだ。

このまま頑張って、仕事を認められたら営業担当になるかもしれないと噂されている。


そんな風に変わった松島さんだけど、人の背後に無言で立つ癖は変わっていなかった。


いつも気付かない内に後ろに立っていて、私の心臓に負担をかけてくれる。

今もまた被害に有った私は、恨みがましい視線を松島さんに送った。


「びっくりするから、無言で後ろに立たないでください」

「中瀬さんが油断してるからでしょ?」

勇気を出して言ったのに、全く取り合ってもらえず流されてしまった。

松島さんはコーヒーを「どうぞ」と私の席に置き、自分は不在の奏人の席に座りこむ。