別れたいのに愛おしい~冷徹御曹司の揺るぎない独占愛~

「お聞きになっていたと思いますが、今回の件は代理人に一任することで決着をつけます。プライベートの問題を職場に持ち込み迷惑をかけた事をお詫びします」

謝罪しながら頭を下げる奏人を滝島課長は鼻で笑って、辛辣な言葉をぶつけて来た。

「謝罪されても今回のことは見逃せないな。君には人の上に立つ適正がないと社長に報告を入れておくから、おそらくなんらかの処分はあると思う。それから中瀬くん」

「は、はい」

私は何を言われるんだろう。

「こんな問題を起こした以上、君は退職を考えた方がいいかもしれないな。元々男漁りをしに会社に来ている社員など必要としていないから、君が退職しても我が社としては何の損失もないからね」

「え……」

男漁り? 

それって私の事を言ってるんだよね……でもどうして?

混乱する中、ふと以前奏人が言っていたことを思い出した。

私が経済的に困っていて、玉の輿を狙っていると言う噂を。

それで男漁り?……酷すぎる。

私は特別優秀じゃないし、派手な結果は残してないけど、毎日頑張って仕事をして来た。

自分に与えられた仕事は責任を持ってこなしていたつもり。

それなのに、いくら上司だからと言って、こんな風に他人を貶めていいものなの?

悔しくて悲しくて、膝の上に乗せていた手が震えてしまう。

だけど言い返したら滝島課長の思う壺かもしれない。

上司に暴言を吐いた社員として、くびにはならなくても、立場が無くなって居づらくなってしまうだろう。