少し驚きながら答える。
「新しいマンションなんてあった?」
「ガーデンプラザってマンション。理沙も見たことがあると思うけど。駅から五分くらいの黒い外装」
「ああ、あれね」
特徴を聞けば直ぐにわかる。
パッと思いつかなかったのは、雰囲気的に分譲マンションだと思っていたから。
「今ならまだ空き部屋があるみたいだ」
「空き部屋って、調べたの?」
「理沙が寝た後に少し調べた」
「そ、そうなんだ」
さすが奏人、仕事が速い。
だけどいくらなんでも早すぎない?
昨日復縁したばかりなのに、同棲のことを具体的に調べているなんて。
「理沙は今の町が気に入ってるから離れたくないだろ?だからあの近辺で探した。ガーデンプラザなら駅にも図書館にも近いし、買い物にも便利だ。セキュリティも文句なくしっかりしてるから良さそうだ」
しかも、凄く詳しいんだけど……かなり真剣に調べたんじゃない?
「引越すってことで進めていい?」
呆気に取られている私に、奏人が問いかけてくる。
いつのまにか、『一緒に住まないか?』から『進めていい?』に変わっているし、いろいろ突っ込みたいところがあるのに、上手く言葉が出てこない。
だってあまりにテンポが速いんだもの。
そう思いながらも、私は頷いてしまった。
戸惑ってはいるけど、断る気にはならない。奏人が好きだから。
奏人がとびきりの笑顔を浮かべる。
「理沙と毎晩一緒に眠れるようになるなんて、最高だ」
含みのある色っぽい視線を向けられ、動揺してしまう。
私、ちゃんと朝起きて仕事に行けるのかな?
不安と期待でいっぱいになりながら、新しい生活に思いを馳せた。

