別れたいのに愛おしい~冷徹御曹司の揺るぎない独占愛~

「彼女は朝美と言って、理沙と出会う少し前に付き合ってた人だ」

「元カノ?」

予想はしていたけれど、奏人から言われるとショックを受ける。

私の心の動きを察してか、奏人がフォローするように言う。

「ああ、でも理沙とのような深い付き合いじゃなかった」

「それならどうしてさっき彼女を優先したの?」


深い付き合いじゃないなら、私を優先してくれても良かったのに。

「朝美を優先なんてしてない。あの時理沙に先に帰れと言ったのは、これ以上朝美と関わらせたくなかったからだ」

「どうして?」

「朝美は過激なところが有るから、理沙に何かするかもしれないと心配だった」

奏人は顔を曇らせながら言う。

「確かに攻撃的な感じはしたし、私もあまり関わりたくない人だと思ったけど……もしかして朝美さんって奏人との別れを納得していないの?」


奏人は終ったつもりでも、彼女はそう思っていない?

私の予想は当たっていたようで、奏人は嫌そうに頷いた。


「別れる時も揉めたんだ。充分話し合ったつもりだったけど、通じていなかったみたいだ」

「朝美さんはまだ奏人が好きって事? でもどうして今更? 私と付き合ってた一年の間は何も言ってこなかったのに」

疑問を口にすると、奏人は気まずそうな表情になった。