別れたいのに愛おしい～冷徹御曹司の揺るぎない独占愛～

「ごめん」

奏人が手を伸ばし、私の頬の涙を拭う。

でも逆効果だ。
優しく触れる手の感覚が、涙を誘うから。

「そうやって謝られても、私は苦しいだけだよ」

「どうすれば理沙は楽になる？」

新たな涙を流す私に、奏人は切なそうに目を細めて言う。

「理沙のそばに俺がいない方がいいのか？」

独り言のような奏人のその言葉に、私は大きく目を見開いた。

奏人が私から離れる？

そんなことって……。

「嫌！」

「え？」

「いなくならないで！」

そう言いながら、奏人にしがみつく。

「理沙？」

奏人は慌てながらも、私の背中に手を回して受け入れてくれた。

「奏人は酷いよ……私のこと沢山騙して傷付けて……それを責めたらいなくなるなんて……」

「ごめん、でも俺がいると理沙の気が休まらないだろ？」

「奏人がいなくなったら、私はもっと辛くなる。側にいてよ」

奏人にしがみつく手に力を込める。

どうか私から離れていかないで。

私だけを見て。