別れたいのに愛おしい~冷徹御曹司の揺るぎない独占愛~

「直ぐに行くから」

そのまま通話が途切れる。

私はスマホを手にしたまま、ぼんやりと暗くなった画面を眺めていた。



奏人の言葉通り、本当に直ぐにチャイムが鳴った。

泣きはらした顔をなんとかする時間も無かった。

重い身体を起こし、玄関に向かう。

外の様子を伺うと、「理沙」と奏人の声がした。

緊張のようなものを感じながら鍵を開けると、コインパーキングで別れた時と変わらない姿の奏人がいた。

私の酷い顔に驚いたのか、奏人が目を見開く。

その視線から逃れるように、背を向け居間に戻ると、奏人も後から着いて来る。

ローテーブルの前に座ると、奏人も隣に座りこみ、口を開いた。

「傷付けてごめん、こんなに泣かせて」

奏人の声が苦しそうに震えている。

今頃、罪悪感が湧いて来て胸が痛いの?

そう感じたけど、そんな奏人を気遣う余裕が今の私には全く無かった。

「そうだよ、凄く傷付いた……奏人って本当に酷い」

更に責めるようなことを言ってしまう。