別れたいのに愛おしい~冷徹御曹司の揺るぎない独占愛~

なんの説明もなく帰れなんて、普通は言えないはずだ。

「理沙は俺にとって誰よりも大切な相手だ。どうでもいいなんて思ったことはない」

「別れた日からずっとそう言ってくれてたよね。態度でも表わしてくれた。だから私もいつの間にか信じちゃってたみたい。奏人はどんなときも私の味方でいてくれるって……でも違ってた。あの女性が私に早く帰れって言った時も何も言ってくれなかった。ふたりで私を邪魔者にした」

「邪魔者になんてしてない! 悪く受け取らないでくれ」

奏人が焦ったような早口で叫ぶ。

だけど私の心には響かない。

「したよ! 奏人にはわからないんだよ」

ふたりに追い立てられて逃げ出した時、私がどれだけ惨めだったかを。

本当に酷い男。

だけど、それでも心が離れない。

奏人に対して無関心になれたらいいのに。

苦しくて涙が止まらない。泣いてることを奏人に気付かれたくないのに。

「……理沙、今から行っていいか? 顔を見て話したい」

私は話したくない。

上手い言い訳で誤魔化されたくないもの。

だけど一方で、奏人に会いたいとも思う。

返事をしないでいると、奏人が言った。