別れたいのに愛おしい~冷徹御曹司の揺るぎない独占愛~

走ったせいで中身がグチャグチャになってしまったバッグを漁り、スマホを取り出す。

奏人からの着信は無かった。

私が傷付いて逃げ出したことを、奏人が気付かない訳はないのに、メッセージひとつ無いなんて。

心配すらしてくれないの?


今頃あの女性と何をしてるんだろう。

あの真新しい車でどこかに移動してるのかな?

私を一番に乗せたいって言ってたくせに……嘘つき。

ジワリと涙が浮かんで来た。

奏人が私より他の女性を優先した事実が、凄く苦しい。

他の女性と過ごしているところを想像すると、胸がはりさけそう。


私……やっぱり奏人じゃないとダメ。

騙されていたのに、今も蔑ろにされたのに、それでも嫌いになれない。

奏人を他の誰にも渡したくない。私の側にいて欲しい。
先が不安だとか、そんなこと考えられない。

散々奏人を拒否して来たのに、自分が拒否されたら傷付いて泣くなんて勝手だと思う。

だけど、分からなかったのだ。

こんなに奏人を必要としていたなんて。

もっと早く気付けば良かった。
それで恋人の立場に戻ってたら、奏人も私に帰れなんて言わなかったかもしれない。

後悔が涙と共に溢れてくる。

でも、既に何もかも遅くて、私はただ泣くことしか出来なかった。