「……は…」



ん…?

何か聞こえる…



「わッ!?」



目を開けると目の前には利夏くんの綺麗に整った寝顔。


そういえば利夏くん家に来てたんだった!

しかもあたし抱きしめられたままだし!!



「…は……あげは…」



眠っている利夏くんの口から出た言葉。


"あげは"…

誰かの名前?

だとしたら…

その子は誰?

利夏くんにとって特別な存在?

それともたくさんいる女の子の中の1人なの?


聞きたいことはたくさんあるけどそんなことを聞く権利あたしにはない。



「……今何時?」

「あ、おはよ、16時だよ」



薄目を開けた利夏くんが眠そうな声を出す。



「あー、結構寝たなー…」



そう言ってあたしを抱きしめる腕に力を込める利夏くん。



「そろそろ行かなきゃ」

「…帰るの?」

「いや、学園行く」

「え?今から行っても授業全部終わってるよ」

「一緒に帰る約束してる子がいるからさ」



そう言った利夏くんはベッドから出てしまった。



「うわ、制服めっちゃシワんなってる」



律儀だなぁ…

一緒に帰る約束のためだけに学園行くって…



「そんな寂しそうな顔されても困るんだけど…」

「そんな顔してないもん…」

「明日はサボらないでちゃんと来なよ?」



ニッコリと王子様スマイルを浮かべてあたしの頭をポンポン。



「わかってるよぉ!」

「じゃあまた明日ね」



利夏くんはひらひらと手を振って部屋を出て行った。

静まり返った部屋。

ベッドに残った利夏くんの体温と匂い。


なんか…

今のあたしって、完全に利夏くんの都合のいい女の子の1人じゃん…