手にすくった水がシワの隙間から溢れ落ちるように、期待だけして失うよりは、最初から手が届かないものだと割り切っていたほうが気が楽だったから。
それがどんなに切なく虚しい生き方だと説教されたとしても、自分にないものを嘆き、できないことをあげつらえ、最初から自分は空っぽで無価値だと思っているほうが簡単だった。