【龍平】
学校にいる間、菫の事が気になって俺は授業なんてロクに頭に入らなかった。
「椎名君。ココ分かる?」
話しかけてくれる友達にも適当に返事してたと思う。
「聞いてる?」
なんて言われる始末。
「ごめん、なんだっけ?」
「これ!数学得意?」
ああ、もうテストか。
高校に入って初めてのテスト。
葉桜が生い茂ってきた季節に、何だか憂鬱になる。
「俺が教えてやるよ。」
「椎名クンに聞いてるんですけど〜。」
クラスメートの女と最近友達になった男とが、そんなやり取りを目の前で繰り広げる。
そのまま教えてやってたけど、頭にハテナしか浮かんでなくて笑えた。
「アンタ超分かりにくい!」
「失礼だな!」
「椎名クン、教えて〜。」
別に勉強は嫌いじゃない。
やればその分返ってくるし。
数字の羅列を指差し、分からないと質問してきた女に俺なりに解説して相槌を打つ。
嬉しそうに話してくる相手の顔をぼーっと見つめた。
菫大丈夫かな。
晴都がいるから少し安心はしてるけど。
今は何も考えないでゆっくり休んでほしい。
なんて考えてたら。
「おい、あの子友達じゃね?」
横にいた友達に突如肩を揺さぶられる。
そいつが指差す先にいたのは、教室の前で俺を探す不安そうな里香。
なんだろう。


