授業が終わり、手渡された紙を見て、わたしはきょとんとしている。


意味がわからないというように唯を見ると、その瞳は不安げに揺れていた。


ひとに訊いといて、その反応はなんなんだ。


ちょっと、かわいいよ……。


じゃなくて。



「え、えと。なんで……?」



どうしていきなりこんなこと……。



「だって、いるんでしょ?」



彼がシンプルなメモ帳に書いて渡してきた“クエスチョン”。



『クエスチョン1
蘭の好きな人は?』



だってわたし、唯と恋愛の話をしたことがない。


もちろん、わたしに好きな人がいることは彼に伝えていないはずだ。


それどころか、女友達にも相談していないのだ。


まぁ、親友には気づかれているかもしれないけど。



「い、いないよ」



まさか、本人に言えるわけないでしょう?


内心焦っているけど、平然を装うことは得意だ。


知らず知らずのうちに、唯によって鍛えられたから。