「さんきゅーっ。そうと決まったら、学校までダッシュだ!」



それだけ言ってわたしの前を一気に走っていく唯。


自由奔放なところは相変わらずだ。


仕方なく、わたしも後を追う。


あぁ、夏の暑さにやられてしまいそうだ。



「蘭、おっせーよーっ」



すでに10mほどの差をつけられてしまっていて、彼は後ろを振り返りながら笑っている。


その笑顔、私だけに見せてほしい。


学校に着いたころには、ふたりして汗だくだった。


もう、朝からダッシュなんてこりごり。


そう思うのに、唯といられることがうれしいと、素直に感じていた。



「蘭?」



いろんな意味で落ち着かない鼓動に苦笑しながら、下駄箱を開けようとした手が止まっていることに気付いた。