カボチャ男とハロウィン



「そういえばお母さん、純哉が部屋にいること教えてくれなかったな……」

「それは俺が頼んだんだよ。千菜ちゃんのこと驚かせたいから、部屋にいることは内緒にしてねって。ちなみにケーキも千菜ちゃんママに冷蔵庫に入れてもらってるから、食後に一緒に食べようね」


「お菓子も今はお預けになっちゃったね」と残念そうに笑いながら、純哉が先に立ち上がる。

そして自然に手を差し出してくれるので、ここはその優しさに甘えようと手を重ねた。手のひらに伝わる温もりが、私にはお菓子よりも甘いご褒美のように感じる。


「純哉、うちで夕飯食べてくの?」

「うん。千菜ちゃんママに食べてってねって言ってもらえたから、ごちそうになろうと思って。……えっ、もしかして俺お邪魔だった?」


ただ会話の流れで聞いただけなのに、純哉は急に弱気な表情になる。垂れた眉が可愛らしい。


純哉は今、私の彼氏だけど、お隣に住む幼馴染みでもあるわけで。小さい頃からお互いの家も部屋も気兼ねなく出入りしているし、食事を共にすることなんて当たり前のようにしてきた。

だから、純哉がうちで夕飯を食べることを迷惑だとか邪魔だからと嫌がっているわけではない。

私が、わざわざ聞いたのは……。


「邪魔なんかじゃないよ。むしろよかった。まだ帰らなくて」


立ち上がって、繋いだ手に気持ちをこめる。

素直に気持ちを伝えようと意識すると恥ずかしくてまた顔が熱くなるけど、今だけはせめてと、はにかみながら純哉を見上げた。