カボチャ男とハロウィン



純哉はいきなり何を言い出すのだろうと不思議そうに小首を傾げているけど、私は構わずに続ける。

だって謝ることは出来たけど、お礼はまだ言えてなかったから。


「ハロウィンイベントに行きたかった純哉には申し訳ないけど、行かないで私の部屋で待ってくれてたのはすごく嬉しかった。カボチャのお面を着けてるのは意味分からなくてちょっと引いたけど……」

「えっ、引いてたの? 俺めちゃくちゃノリノリで待ってたのに……!」

「だって学校であんな別れ方したあとなんだもん。いきなりお面を着けてる純哉が部屋にいて、しかも第一声が“ハッピーハロウィン”なんだから驚くし展開飲み込めないよ」

「だから最初、ドア閉めようとしてたのか……」


記憶を辿った純哉が察したように苦笑いする。

それから私と学校で別れてからこの部屋で再会するまでの行動を打ち明けてくれた。


「学校で千菜ちゃんに嫌いって言われて、色々反省してさ。千菜ちゃんの気持ち取り戻したくていろんな方法を考えたんだよ。正面から会いに行っても気まずくなるかもしれないし、それなら千菜ちゃんママに頼んで部屋に入れてもらってサプライズ的に会った方が気まずい空気も軽くなるかなって」

「それで、カボチャのお面?」

「そうそう。千菜ちゃんとは付き合ってからまだイベント的なもの出来てなかったし、せっかくならハロウィンを仲直りイベントにしちゃおうって!」


きっとこの案を思い付いたとき、純哉はナイスアイデアだと思っていたに違いない。経緯を説明してくれる声が弾んでいるから想像がつく。