何やかんややりとりをしているうちに、せっかく顔に集中していた熱が徐々に引いてくれたというのに……。
これじゃあ、また顔が真っ赤になっちゃうじゃん。
面倒くさい性格なのは承知で、照れ隠しで拗ねたように装いながら手を差し出した。
「……返してよお面」
「やだよ。また顔隠しちゃうじゃん。隠さないならあげてもいいけど」
そう言われて小さく唸ってしまう。
それならやたら私の頬を火照らすようなことをするのはやめてほしいんだけど。
「ていうか千菜ちゃん、いつまでもお面にこだわっていないで何かお菓子でも食べようよ」
話の流れを変えながら純哉はベッドから下りる。
不服そうにしている私の機嫌を直そうとしているのか、純哉はお面を自分の背中に隠すと、部屋の片隅に置いてあったビニール袋をいそいそと引き寄せた。
私も渋々ながらフローリングの床に下りて、そんな純哉の正面に座る。
そして冷静になると、純哉の一連の行動は色々と驚くことばかりだなと思った。
この部屋の主である私が帰ってくるより先に部屋で待ち、ハロウィンらしいことをしようとカボチャのお面なんかを作ったり、おまけにお菓子まで買い揃えてちゃっかり運び入れてあるのだから。
学校で散々駄々をこねた末に、嫌いだなんて言って立ち去った私なんかのために……。
「……ありがとう」
「へっ?」
純哉がビニール袋から私が好きなお菓子ばかりを出すのを見ていたら、そう言わずにはいられなかった。
友達に誘われていたハロウィンイベントにも行かずに、私のためにこうやって準備して待ってくれていたなんて。ほんと、面倒くさい性格をしている私にはもったいないぐらい優しい彼氏だ。



