カボチャ男とハロウィン



「千菜ちゃん、顔見せてくれないとイタズラしちゃうよ?」

「……今日がハロウィンだからって、そんな言葉が通用するわけないでしょ」


この方法ならお面を外すだろうと考えて自信満々な顔になっている純哉の言葉を、小さくため息をこぼして拒否する。

すぐさまむっとして唇を尖らせる純哉の顔は何だか幼く見えた。まるでトリックオアトリートと言ったにもかかわらずお菓子をもらえなかった子供みたいだなと、お面の内側で密かに微笑んでしまう。


「いやいや、ちょっとは通用してよ! それとせっかくだからハロウィンらしいこともしようよ! 千菜ちゃんに楽しんでもらおうと思って、俺なりに色々考えてたんだからね? 千菜ちゃんが帰ってくるまでにそのカボチャのお面を作って用意したりして。……あっ、ちゃんと千菜ちゃんが好きなケーキ屋さんのカボチャのモンブランとかお菓子も色々買ってきてあるからね」

「えっ、ケーキもあるの?」


ぺらぺら喋り始めた純哉をスルーしようと思っていたけど、大好きな甘い誘惑につられて思わずカボチャのお面を持つ手を下げて聞き返してしまった。

あ、と間抜けな声が漏れたときにはもう手遅れ。「千菜ちゃんちょろすぎ」としたり顔になっている純哉にすかさずお面を取られてしまう。


「やっと顔見せてくれた」


お面越しじゃなくてはっきりと目にした純哉は、たったこれだけのことを本当に嬉しそうに笑って言ってくれる。

純哉に想われていることをまともに自覚したばかりなので、その笑顔がとても甘く優しい意味を持っているように感じてしまった。

破壊力が凄まじいので困る。今はちょっとやめてほしい。