カボチャ男とハロウィン



それに比べて純哉はいつも余裕だからむかつく。何だか私ばかりが翻弄されてるみたいだ。


そう思っている間も、意地悪く細められた綺麗な瞳が楽しそうに追いかけてくる。

ちっとも楽しくない私はそれから何とか逃げて顔を隠そうと、純哉が外したあとにその辺に適当に放り出されていたカボチャのお面を取って顔の前に構えた。

三角の形をした小さな目の穴の向こうに、きょとんとした純哉の顔が見える。でもすぐに私の意図を汲んで「そこまでして隠さなくても」と苦笑いをした。


「誰かさんがやめてくれないのが悪いんでしょ」

「ごめんごめん。潤んだ目で真っ赤になってる千菜ちゃんが可愛いから、見たくてついついイジワルしちゃった」

「かっ、可愛いって何よっ、またそうやって人のことからかうんだから!」

「からかってなんかないよ。本当に可愛いから見たくて言ってるだけなんだから」


そう言いながら純哉がずいっと近付いてくる。

咄嗟に後退りするけど、私が座っているのはベッドで。その上をずりずり後退していけば背中が部屋の壁にぶつかる。

結果、遠慮なしにベッドに上がってきた純哉によって、壁際に追い詰められてしまっただけだった。

横から逃げようともするけど、片手でお面を持って顔を隠しながら動くのはどうしてももたついてしまい、呆気なく純哉に捕まってしまった。

柔い力で手首を捕まれている。

すると名案を思い付いたような笑みが三角の穴からちらりと見えて、何だか嫌な予感しかしなかった。