カボチャ男とハロウィン



純哉は自分が着ている制服のカーディガンの袖を少し伸ばして、涙で濡れた私の目元を拭う。

それを申し訳なく思うのに今は優しさに甘えていたいなんて都合よく考えて、大人しくそのままでいた。

私を見つめる純哉の瞳が心なしか優しく見えて、それだけでまた涙が出そうになるぐらい嬉しいのだけど、これ以上はだめだと必死に涙を止めた。

泣いて高ぶっていた心が、次第に落ち着いてくるのを感じる。

そんな私を見計らって、純哉は私をベッドに座らせた。そして自分はその前の床に座り、下から私を見上げてくる。

私の両手を取って繋ぐと、穏やかな声で言った。


「ごめんな、千菜ちゃん。俺、千菜ちゃんの気持ち全然分かってなかった……」

「……私だって、ちゃんと言えばよかった。言わずに純哉に分かってもらいたいって、わがままだった」

「俺だって、わがままだよ」


「え?」と問う声は、純哉の胸の中に埋もれた。膝立ちになった純哉が、私を抱き締めていた。

壊れ物を扱うような柔らかい抱擁に、遠慮のようなものを感じる。それに応えるように背中に手を回して純哉の広い背中を抱き締めると、さっきよりも純哉の手に力が入った。

ぴったりくっついた身体。思えば付き合い始めてからこうやって密着することは、あまりなかったかもしれない。

幼馴染みの彼とは幼少期に手を繋いだりふざけて抱き付いたりしたこともあったけど、恋人としてこうやって温もりを共有するのはまた違ったものに感じる。