相変わらず教室で話すこともないので、気が付けばカウントダウンの日に喋って以来、ほとんど言葉を交わしていないという現状。それでも毎日のように顔を合わせるのだし、目が合えばお互い小さく頭を下げる。そのときなにか話したいことがあれば声を掛けたり掛けられたり。とくに不便を感じることはない。


そんなこんなで日々は過ぎていき、あっというまに卒業式を迎えることとなる。

在校生は自由参加の卒業式には杉本もきていた。どうやら由香先輩は東京の大学に無事合格したそう。

そして、中庭で話すふたりを見かけた。
由香先輩と杉本。

あたしの場所からは、ふたりがなにを話しているのかまったくわからなかったけれど最後はお互い笑顔で別れていた。


時間は、
時間だけは誰にも平等に流れている。

ときにはこんなふうに時間が解決することもあるのだ。
なんとなくそう理解した。


そして春も近づくそんなころ、奈美の高校合格も聞いて——。