「さっきの演奏、言っちゃ悪いが他の奴らの音はイマイチだった。……だけど、あんたの叩く音だけは少し違った」
そうなんだ、と私は真面目な顔で話す紅志と、そっぽ向いてる珪甫の顔を交互に見る。
「あんた、あいつらに合わせて、ワザと下手に叩いてただろ?」
「……!!」
珪甫がハッとしたように紅志の顔を見上げた。
どうやら図星みたいだ。
「お前、もっとイイ音、隠してんだろ?その音、俺達の為に叩いてくれない?」
な、なんて素敵な誘い文句!
私がクラクラしちゃうってば!
あ、失礼。
私がそんなふざけたこと考えてる間、珪甫はじっと紅志の目を見て考えてた。
そしたらふと、何かに気付いたみたいな顔で呟いた。その目が見開かれる。
「あんた……岡崎紅志?」
「え、そうだけど……どっかで会ったか?」
「いや……別に」
珪甫は不思議そうな顔してる紅志にハッキリとは答えずに、また口をつぐんでしまった。
なんだろう?珪甫って子、紅志を知ってるみたい……?



