VOICE



な、なんか怖そうだぞ?!

珪甫って子は、壁際に置かれたボロいソファに沈み込んでドラムスティックをクルクル回してた。
高校生にしては大人っぽい雰囲気。
切れ長の目と鼻筋の通った顔がすごく冷たい印象だ。髪は少し茶色くしてるくらいで、短め。そんなに派手じゃなかった。

「そういやぁ、あんたらドラム叩くやついないんだっけ?」

ふと思い出したように言ったボーカルの人は、またまた軽く言い放った。

「あいつ、使ってみたら?愛想はわりぃけどドラムの腕はいいぜ」

「え?!」

私は驚いて声をあげ、海斗と紅志を振り返った。

是非とも、というそのバンドマンのお兄さんの進めもあって、数十分後、私たち三人は珪甫って子に声を掛け、ライブハウスの裏口に立っていた。

「なに?」

いきなり連れて来られた彼は、不機嫌そうに涼しげな目元をしかめ、私達を見てきた。

ひぃ~!やっぱり怖い!

私がビビって二人の後ろに隠れていると、最初に海斗が彼に話を切り出した。

「なぁ、この後どこで叩くとかもう決まってんの?」

「は?なんであんたにそんな事教えなきゃなんねぇんだよ?」

いきなり不躾な質問をする海斗に、思いっきり反抗的な珪甫。

「いや~、キミさ、行くとこ決まってないんなら俺らと一緒にやってみない?」

「は?」

「ウチのギタリスト、キミのドラムの音がイイってきかないもんだから~」

「んなこと言ってねぇ!」

ベシッ!

紅志が海斗の後頭部をはたいた。
いって~、とわざと泣き真似をしだした海斗を放って、今度は紅志が口を開いた。