ってなんだかんだふざけてる間に、3組目のバンドがステージに上がってた。
でも、ドラムのカウントで1曲目が始まった瞬間。
「わ……なにあれ?」
「ひっでぇな……」
私と海斗が思わず呟くと、紅志のチョップが二人の頭に飛んできた。
「聞こえるだろ!こっち来い!」
私と海斗は紅志に腕を掴まれて控え室の隅まで引っ張って来られてしまった。
ええー、自分だって一組目のバンドのことボロクソ言ってたのに?!
一瞬そんなこと思ってしまったんだけど、ね。
するとそこでは一組目のバンドの人達が楽器片付けたり煙草吸ってたりしてた。
「あ、おっつかれさま~」
間延びした声で話しかけてきたのは、たぶんボーカルの人。あんまよくわかんないんだけど。
彼はマルボロを口にくわえながら海斗を見てニッて笑った。
「あんた歌すげぇな!俺びっくりしたよ!羨ましいなぁ、俺にもそんな声あったらなぁ」
決して美形ではないけど、笑った顔は人なつっこくて好印象だ。爽やか青年て感じ。
「あ、ありがとうございます!」
いきなりの賛辞の言葉に、海斗もびっくりしてるみたい。ぺこりと丁寧なお辞儀を返した。
「いやホント!応援すっから頑張れよ、な!」
そう言ってその人は海斗の背中をバンバンたたいた。
「いててて……いや、あのそちらも頑張ってくださ……いてっ!」
最後に一際強く海斗の背中を叩いたその人は、なにげなく口を開いてとんでもない事を言った。
「いや~、俺ら今日で最後だからさ。解散なんだ」



