VOICE



再びライブハウスの中に戻った私達。中に入った途端に驚いて立ち竦んでしまった。

なに?!この爆音?!

思わず耳を塞いだ私だったけど先を行く海斗がこっちを見て手招いた。
ステージ脇から少しだけ覗かせてもらえた。

あ、さっきの金髪男!

演奏してるのはBLACK NOISEだった。

開演前に失礼なこと言ってきた敦士が、マイクに向かって絞り出すような声を出してた。

海斗とは全然違う声。
低くてお腹にずっしりとくる重量感ある声が響いた。

スゴい!

私が目を丸くして固まってると、背後で腕組みしてた紅志がぼそりと呟いた。

「アイツの歌、すげぇだろ?昔からアレだけが取り柄だな……」

ショックだった。あんな最低なヤツからあんなスゴい声が出てくるなんて。

み、認めたくねーっ!!悔しいけど……上手い!

オーディエンスの盛り上がりはハンパない。
たたみかけるように演奏されるハードロックに拳を突き上げ、飛び跳ね、喉が壊れるんじゃないかってくらい歓声があがる盛り上がり。

ボーカルの敦士もスゴいけど、私の胸に響いたのは彼の歌う姿を睨むように見据えながらドラマーが叩く、メロディーを支えるドラムの音。

私はまばたきするのも忘れて彼に見入っていた。

「海斗、岡崎さん……あのドラムの音……」

私が呟くと、海斗も紅志も同時に頷いた。

「「あぁ……」」

そして私たち3人口を開いた。同時に。




「「「あのドラム欲しい!!」」」