私はそういえば、とゴスロリくんに問い掛けた。
「ね、名前教えて?」
「え?あ、沢口登です」
ゴスロリくんは小さな声で答えてくれた。
登くんか。可愛いなぁ~!
「あの、歌夜さん、今日もかっこ良かったです!」
そう言ってにっこりと笑った。しかももう帰ってしまうと言い出した彼に、メインのバンドは?と聞いた私に、彼は苦笑い。
「あのバンドには歌夜さんがいないので」
フワフワのスカートを揺らしネオンが光る街に消えていく後ろ姿を見ながら、海斗がひとこと。
「完璧に歌夜のファンだな、あいつ……珍しい」
珍しいって失礼なっ!!
私は海斗に蹴りを飛ばしながらも、ほんわかあったかい気持ちで彼を見送った。
「アイツ……」
「え?」
小さな声で紅志が何かを言いかけたような気がして、私は彼を振り返った。そこには微かに眉を寄せて考えている紅志がいた。
「どうした紅志?」
海斗が問い掛けると、はっとしたように顔を上げ、首を振った。
なんにもない、と言いながらライブハウスの裏口に手を掛ける紅志の背中を、私は首を傾げながらも追いかけた。
なんか、変なの。



