「初めまして~!PRISONERで~す!」
一曲目の最後の一音を弾き終わった直後。拍手の中、海斗は口を開いた。
「かっこい~っ!!」
誰かが叫んだ。
「サ~ンキュ!」
海斗が投げキス。その瞬間、黄色い声がいくつかあがる。
お~い……、キモイよ。
下手でそれを見てた私。だけど。
「かわい~!!」
なに!?可愛い?!
声のした方を見れば、最前列でバーに寄りかかってる女の子と目があった。
私?
身振りだけで聞き返すと、ウンウンと頷いてくれた。
う、嬉しい!!
私は笑顔をその女の子に返した。
すると海斗が再び話し始めた。
「はい、なんと俺たち。今日が初めてのライブハウスでのライブで~す!よろしくね~!」
へぇ~!って声と拍手。
「とりあえず今日は俺たちの名前だけでも覚えてってね~」
はーい!
そして海斗はメンバーの名前をサラッと紹介してから。
「じゃ、時間もあんまりないから。次の曲、いくね~」
キャーキャー言う声があがった。
すごい……たった一曲とこのトークだけでみんなの心掴んでるし!
なんてびっくりしてるうちにカウント。
私たちは二曲目を演奏し始めた。
そこからはもう躊躇うことなくリズムに乗って、叫び、飛び跳ねるオーディエンス。
私もそれにつられてテンションMAX!
はっきり言って記憶が曖昧。
ステージの前ギリギリまで行って、スピーカーに足乗っけてシャウトする海斗や。
はしゃぐことはないけど、唇の端に柔らかな笑みを乗せてギターを弾く紅志を。
それを夢でも見てるみたいな気持ちで私は眺めてた。



