フッと客電が落ちる。
一瞬の暗闇。
一瞬で沈黙。
うっすらと明るいステージ。
私たちはその舞台へと足を踏み出した。
オーディエンスは無言のプレッシャーをかけてくる。
初めて見るバンドを見極めようと目を、耳を、全身を研ぎ澄まして待ち構えているんだ。
ベースのネックを持つ手が少しだけ震えてる。
落ち着け、私。
紅志の横顔を見る。
海斗の背中を見る。
ドク、ドク、ドク……
心臓の音が速い。
私は大きく息を吸い込んだ。
そして、海斗の合図。
3、2、…
ええい、いくぞ!!
ピックを持つ指を勢いよく弦に振り下ろした―――。



