「お~っと、うちの大事なベーシストに触らないでくんない?」
「あぁ?」
気付けば背後に海斗が立ってた。
その一歩後ろには紅志も。帽子の影で黒い目が鋭い。
「オマエなんかに触られたら歌夜が汚れるし」
海斗も爽やか笑顔なのに、その瞳だけは笑ってなかった。
本気で怒ってる。
「は!こんなガキ、からかっただけだろ!お前ら呼んでやったんだって、仕方ねぇからだ。さっさと前座ヤッて帰れよ!」
金髪男は汚い言葉を吐き出し紅志の横まで行って、下品な笑いを浮かべた。
「こんなくだらねぇヤツらとやってんだな、お前。ちったぁマシになったかと思えば相変わらずだ」
「くだらないってなによ?!」
私は頭にきて金髪の最低ヤローに近付こうとした。けど、海斗の手がそれを止めた。
その腕越しに紅志がフッと笑うのが見えた。
ひどく冷たい笑み。
「くだらないかどうか、オト聴いて確かめろよ。お前等の客、全部奪ってやるから」
「はっ?んなことできるかよ!ばーか!」
大声で笑ってひらひらと手を振り金髪男は去って行った。その後ろ姿が消える前に、私は我慢できなくて叫んだ。
「なにアイツ!?なんなの!超ムカつくっ!!」
私は怒りがおさまらなくて地団太を踏む。
「ごめん歌夜、アイツ俺の昔のバンド仲間だったやつで。BLACK NOISEのボーカル、敦士だ」
紅志が顔をしかめて頭を下げた。
「お、岡崎さんが謝ることないです!ムカつくのはアイツだけなんですから!」
「ホントだよ、アイツ最悪だな。危うく歌夜の貞操の危機になるとこだ!」
そう言いながら海斗、半分笑ってません?!



