VOICE



そして、なかなか寝付けない夜を過ごし、私は寝不足のまま朝を迎えてしまった。

「あぁ最低。ひどい顔だぁ~」

なんだか顔がむくんでるよー。

洗面台の前で鏡を見ながら落ち込む私の背後から、父親の声。

「どうした歌夜~?朝っぱらから暗いぞ~」

「あ、父さん。今日せっかくの初ライブなのに寝不足で顔むくんでんの……」

ブスッとした顔をする鏡の中の私を見た父は、そうか?なんて首を傾げながらニッと笑う。妖しげに白い歯がキラリンと光った。
娘の私から見てもなかなか整ってるその容姿に、思わず目を細めたくなった。

うわ!まぶしいよ父!

「今日は歌夜の晴れ舞台だし、久々に……やってやろうか?!」

その瞬間私は飛び上がった。

「マジ?!いいの?やってやって~!」

私は父の腕をガシッと掴んで満面の笑みを浮かべた。

その両手が神に見えるよ父さん!!





それから数時間後の午前11時。

「行ってきまーす!」

私は元気よく家の玄関を開けていた。気を付けろよー、という父親の声を背中に、私は海斗の家へ向かった。

はぁ~なんか緊張してきた~!大丈夫かな~私?

ドキドキとワクワクとソワソワと。いろんな思いが混ざって私の頭ん中はハイ。

今にもスキップしそうな勢いでベースを背負い、海斗の家までの道を急いだ。