VOICE



「えぇっ!?バンドって……マジで?!」

5分後、私の話を聞き終わった葵のひとことがこれだった。
まあ当たり前だよね、この反応は。

私はへへっ、と苦笑いをしながら窓枠にもたれた。

「私もさぁ、マジでメンバーになれるなんて思ってなくて。今でも信じらんないもん」

それが本音。でも、毎週路上ライブが終わってしまうと、言いようのない喪失感が私を襲ってくる。
もっともっと、ずっと一緒に音楽を鳴らしていたいのに、あっという間に過ぎる時間に私のバンドへの欲は増すばかり。
だからか、この頃は学校へ来るのが憂鬱で仕方ない。
そんなことを葵に話したら。

「ん~そっかぁ。でもさ、歌夜」

窓枠に両肘をつけ、頬杖をつきながら抜けるような青い空を見上げ、葵が口を開いた。彼女は私の方は見ずに真っ直ぐ前を向いたまま話す。

「歌夜がそのバンドが楽しいってのはわかる。でも、まだ本格的にライブとかやってる訳じゃないだろ?だいたいその大学生たちはプロになろうと考えてんの?」

「それは」

そんなこと気にしてなかった……。

言葉に詰まった私に葵は優しい顔でこっちを見て言った。

「だからさ、学校は学校。バンドはバンド。それぞれいいところ見つけて楽しめ!歌夜が来なくなったら私が寂しいだろ?な?」

バンッと背中を思いっきり叩かれた私は、顔をしかめながらも葵の言葉に頷いた。

「そうだよね。ありがと、葵。……ってかいってぇ!マジ痛い!」

「そんな大げさな~、こんなか弱い私の力で痛いわけないでしょ~、うふ」

ワザとなよなよした身振りで話す葵に、私は思わず噴き出してしまう。

「ぶっ!葵それ、めっちゃキモい!やめて!あっはははは!」

私と葵のばか笑いが窓から校庭に響いていた。




でも、実はまだ内緒にしていることがあったんだけど……ね。