「あ、歌夜」
廊下へ出た瞬間、登の姿。その皮肉っぽい笑顔が私を見ていた。
「バンド辞めるなんて、俺は認めないからね」
「のぼ…」
「ほら、早く行きなよ。あんたには俺の大好きな“ベース”これからも弾いてもらわなきゃなんないんだから。もっと上手くならなきゃ許さないよ」
そう言ってもう一度登が笑った。今度は満面の笑み。
大好きな、ベース……。
ポカンとする私に登はまた言った。
「ほら~、行けって早く!」
不覚にも登の言葉に目をウルウルさせてしまった私を、ポンと叩く。葵と同じ場所を。
「……ありがとね、登。やっぱあんた好きだわ!」
「ばぁ~かっ!!」
登の笑い声が、走り出した私の後ろで聞こえてた。



