紅志が怒鳴った。
唖然としてる私達をよそに、紅志は海斗をじっと見つめたままだ。
「なんで……、なんで珪甫の腕が怪我しなきゃなんねぇんだよ!?俺の……っ、俺の手だったらいくら切られたって折られたって……」
床にしゃがんだままの海斗の顔は、その茶色の髪がかかっていてよく見えなかったけど。
泣いてるかもしれない。そう感じた。
やがて力なくおろされた海斗の拳を片手で握ったまま、もう一方の手で紅志は彼の背中をポンポンと叩いた。
宥めるようにゆっくりとしたリズムをつけながら。
「……だからって、お前の腕がヤられたっていいとは思わない。たとえお前がボーカルだから、腕使わないから……だから腕切られたっていい?んなわけないだろ?」
落ち着いた声で紅志は続ける。その瞳はでも、鋭い光を含んでた。
「誰が切られたって殴られたって、それは自分がヤられたのと同じ。珪甫の腕は、俺らの腕でもあるんだから」
だろ?と紅志は海斗の俯いてる顔を覗き込んだ。



